「畳」とは「たたむ」ことを意味し、折り返して重ねる意味でもあって、たためるもの、重ねられるものということから敷物全てを意味したものでもあり、これが「畳」という言葉の起こりであると言われています。 「畳」と言う言葉が使われた最も古い文献は、 「古事記」(太安麻呂撰・和銅五年 712年)中巻の、 「葦原の しけしき小屋に 菅畳 いや清敷きて 我が二人寝し」 (神武天皇) 「海に入りたまはむとする時に 菅畳八重 皮畳八重 きぬ畳八重を波の上に敷きてその上に下りましき」(景行天皇) |
縄文時代 | ・竪穴住居にワラ敷きの跡 | |
弥生時代 | ・ワラを薦コモ、筵ムシロ。つかなみなどに加工 | |
古墳時代 | ・高床式住居で敷物、筵(ムシロ)、しとねの使用 | |
飛鳥時代 | ||
奈良時代 | ・古事記の中に薦畳、皮畳、絹畳の記述 ・畳の専門技術者の生成 ・畳に厚みが加えられ調度品としての置畳が作られた。 ・正倉院にのこる聖武天皇と皇后の御床畳は薦筵を折りたたみ表をつけ緋(黒)地の錦の端をつけた畳で、長さは237cm,巾119cmあったといわれる。 |
|
平安時代 | ・工匠としての畳技術者が出現 ・帳台構えとしての寝所と厚畳が用いられる。 ・身分によって畳の大きさ、厚さ、畳縁の色・柄が分けられる。 ・寝殿造り普及、貴族は畳、庶民は筵(ムシロ)・薦(コモ)が一般的 |
|
鎌倉時代 | ・書院つくりの普及、武家屋敷では寝所に畳が敷きこまれるようになった。畳から布団が分化する | |
室町時代 | ・村田珠光が書院台子の式事を定めて珠光真の四畳半の茶室形式を始める。 ・小さい部屋割りが行われ畳の敷き詰めが広まった。 ・武野紹鴎による行の四畳半茶室 |
|
戦国時代 | ・武家屋敷では寝所に畳が敷き込まれるようになった。 ・畳業の安定性長期に入る。 ・大阪畳屋町の出現 |
|
安土桃山 時代 |
・綿ぶとんが普及し、町家や農村でも畳が敷かれるようになった。 (当時、まだ庶民にとって畳と布団は貴重品だった。) ・城郭の造営などの流行により畳屋町が形成される。 ・千利休による草の四畳半茶室 |
|
江戸時代 |
・茶道の隆盛による畳の特殊化 |
|
明治時代 | ・文明開化に伴い家具調度の洋風化で畳の上に椅子が持ち込まれた。 ・中流以下でも書院造り風の座敷拡大傾向が現れる。 ・明治の一般民衆の家として床の間つき6畳間8畳間が一般化した。 ・麻布縁にかわる錦糸縁が生産される。 ・畳床をつくる製畳機が一部実用化される。 ・まだ農村では婚礼・法事以外、日常的にはこも、むしろ、上敷などが敷かれていた。 |
明治時代の畳店 安政2年(1855年) |
大正時代 | ・産業革命による都市への人口集中が住宅需要を拡大し、畳をより大衆化した。 | |
昭和時代 | ・文化住宅化、和洋折衷住宅へと変わる。 ・畳を縫い上げる縫着機が開発された。 ・公団住宅の出現、団地族という言葉が流行る。 ・各地にニュータウンが誕生し3DKなどの呼び方が始まる。 ・昭和48年をピークに建設ラッシュ ・大戦後のアメリカナイズと住宅建設の増大の間で次第に、洋風化していった。 ・畳の需要の高まりから畳横着機が本格的に使われるようになり機械縫いが一般的に なる。 ・中高層マンション時代到来、畳の軽量化されるようになった。 |
|
平成時代 | ・超高層住宅の出現 ・住宅建設のラッシュ ・住宅建設の伸びが鈍化、床にフローリングが使われ畳需要も鈍化 ・畳縁もデザイン化され文様も多様化。 |
■畳たたみの敷き方
(祝儀敷き)
現在、家屋等の畳は通常この敷きかたです。
4枚の畳の角が一か所に集まらないようにします。
(不祝儀敷き)
お寺や大広間のような部屋で見ることが多いですが、昔は
葬儀など縁起の悪いときに畳の 敷き換えを行っていました。
畳の四隅が合って十字が出来ると死を連想するものとして避けられ、また四隅が合うと傷み やすいという現実的な意味もあります。
丹精をこめて入念に作り上げられた畳には、技術の集積や製作者の造形へのあざやかな手運びといったもの、あるいは座敷としての味わいや美しさを感じます。
京間系の伝統技術とされる麻布緑本高宮つじ割りづけや、関東の伝統技術とされる一本縁表現技法は、今では極く限られた人々でしか造作をかけることが出来なくなっていますが、それらの造作には畳づくりを超えた丹念さが存在しています。
また空間に独特の枠をつくり出す表現の豊かさがあります。そして出来映えの妙をみせてくれます。しかも造作の数々には、畳の良さを示すのに十分なものがあります。畳とは、その造作の大半を機械の力に借りるとしても、やはり手づくりの味が生かされたものが一番です。
部屋に体裁よく敷き詰められた畳には、表面にあらわれた畳表と畳縁のほかは、なにもありません。その姿や形は同じです。にも関わらず、畳を巧みに敷き合わせることによって、独特の座敷空間を生み出していくところに畳の世界があります。しかもその造形パターンは極めて限られたものです。そのため敷き合せの美しさを出す必要があります。そのために、隠れた部分の手間をかけて、丹念な造作を重ねるのです。そこに造形への良し悪しを追求していかなければならないという畳技術の難しさや、造形への厳しさがあるといえます。
丹念に仕上げられた造形を眺めていると、畳というのは無造作に作り上げていくだけの住宅部品ではないということを感じることができます。むしろ表面的な派手さが乏しいゆえに、目立たないところに技術の良し悪しが問われて、丹念な造作が求められていく理由があるといえます。二畳台や拝敷、あるいは御神座といった有職造作には、表面上の姿や形の変化もあって人々の関心を集めています。
特殊造形には表面上の特異さや、目に映る造形の妙もさることながら、隠れた面での造作の丹念さによって表現されたものです。しかもそれらの造作にみる心技一体は、ごく普通の座敷畳をつくるという造作の積み重ねから生じたもので、姿や形は異なるものの共通した畳技術から出たものなのです。この点、畳技術の妙技はもっと多く消費されている、ごく一般的な座敷畳にこそ十分に発揮されなければなりません。